当法律事務所の事務所ニュース 『けやき通り』 を発行いたしました。
『けやき通り』 に掲載した由良弁護士と丸山弁護士の記事を掲載いたします。
「生活保護基準引き下げがもたらすもの」
弁護士 由 良 登 信
憲法25条は、全ての国民に、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」 を保障し、国家にその保障を履行するよう義務づけています。生活保護基準は、厚生労働大臣が定めますが、これまでの保護基準額は、「最低生計費」 の7割程度の低い水準に押さえられてきました。ところが、今年の8月から、過去に例を見ない生活保護基準の大幅な引き下げが強行され出しています。生活保護費を3年間で総額670億円削減するというもので、受給額が減らされる世帯が、96%に及び、削減幅は平均6.5%、最大10%というものです。過去には、0.9%減と、0.2%減の2回の引き下げがありましたが、今回の6.5%減が前例のないいかに大きな引き下げであるかわかります。
これにより、都市部の夫婦と子ども2人の4人世帯では、保護費が月2万円の減額、40才単身世帯では7,000円の減額になります。
7.000円というのは一週間分の食費に相当する額です。食事回数を減らす、入浴を減らす、電気を節約するというようにして、ギリギリの生活をしているところへの今回の大幅引き下げは、生存権を犯すものです。(しかも消費税増税の追い打ちが待っています。)
その影響は、生活保護基準を目安にして利用条件を設定している就学援助 (公立小中学生の157万人の児童が利用)、生活福祉資金貸付制度 (3万世帯が利用)、介護保険利用料の減額制度などに波及しますし、住民税の非課税基準が下がり、これまで非課税だった世帯 (3100万人) に課税される人が出てきます。また、「最低賃金」 にも影響が出てきます。
和歌山でも生活保護受給者が審査請求に立ち上がりました。その支援に取り組みます。
(学習会で講演する由良弁護士)
「憲法連続講座を開催」
弁護士 丸 山 哲
私は、青年法律家協会 (青法協) という団体の和歌山支部事務局長を務めています。 先日、青法協主催で、3回連続の憲法連続講座を行いました (7月24日、8月7日、8月20日)。
憲法連続講座は、7月の参議院選挙で自民党が多数の議席をとると、自民党主導の憲法改定議論が高まるのではないかという危機感の中、急遽開催を決定し、準備を進めたものです。
そして、このような危機感は参加者も同じで、各回70~80名が来場し、企画としても大成功でした。
講座の質疑応答・意見では、特に、なし崩し改憲の動きに対する懸念について、大きな問題意識を多くの参加者がもたれていたことが印象的でした。 なし崩し改憲の動きとは、これまでずっと集団的自衛権の行使を認めないと明言していた内閣法制局の見解を、その長官を据え変えることで変えようとする動きのことです。
このような動きは、国民が気付かないところで、権力者 (政府) が憲法を都合よく変更することであり、絶対に許されるものではありません。
私は、現憲法を改定するべきではないと考えているのですが、改定すべきと考える人もいるでしょう。 ここで大事なことは、色々な考え方があることを前提として、皆が考え、議論を尽くして、国民が国のあり方 (憲法) を決めることです。
現憲法を維持するにせよ、改定するにせよ、国民的議論を尽くすことなく、権力者 (政府) が都合よく憲法を変更することは許されません。
このことを繰り返し述べて、今号の拙稿といたします。
(宣伝行動にて)
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